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寒冷地の旅をシリーズものにしてみた。 まつげが凍ったとかバナナで釘が打てたとかそんなドラマチックな体験した訳ではないが、貧乏旅行は体が暖まるひとときというものがない。 だらだらと寒い日々が続くので、それはそれで結構きつく、心も冷え込む。 インド北部の山岳地帯ダージリンは12月ともなると結構な冷え込みである。 泊まった宿では外気とほぼ同じ気温だと思しき掘建て小屋でバケツに汲まれた熱湯を水でうめながら体を洗っていた。 部屋の中ももちろん寒いので、ほとんど寝袋の中といった具合。 そんでもって、大江健三郎なんかを読んでる。これはいかんね。 そんな寒い街の寒いツアーに参加してきた。ダージリンでは街のどこからでも雪をたたえたヒマラヤ山脈が眼前に広がっている。 でも街から更に奥に入ったところにタイガーヒルという場所があってそこからだとエベレストをはじめとする世界最高峰の頂きが一望できるらしい。 宿屋のにいちゃんが、ここで朝日をみるツアーを勧めるので参加してみた。 朝の4時頃「タクシーが来たぞ!」とたたき起こされる。 眠くて寒かったけど、がんばって寝袋からごそごそとはい出し、暗闇の中乗り合いタクシーに乗り込んだ。 タクシーと言っても日本製のものとはずいぶん違う。インド名物のオートリクシャーと呼ばれているやつで固いサスペンションを通して路面状況が確実に体に伝わってくる。 長いシートが2つ向い合せに配置されていてここに人がギュウギュウ詰めで座るわけ。 風よけの幌がついているんだけど、風びゅうびゅう回り込んで幌の内側に入ってくる。 車内の客はなぜか全員インド人で(国内観光ですね)褐色の肌は暗闇に溶け込んでしまい、じーっとじーっとぼくを凝視する目玉、それが宙に浮いている。うむむむ。 ガタゴトガタゴトゆられながら山道を1時間くらい(体感時間が長いからもっと短い時間だったかも)進みようやく現地に到着。 辺りはまだ真っ暗でどんな地形かはよく分からないのだけれども、巨大な展望台があってそこだけ明かりが点いていた。 展望台内部と屋上にインド国内外のツアー客がひしめき合い、みんな夜明けを待っている。 賑やかな雰囲気に心が和らぐが、夜明け前でなんせ寒い。 夜空は白みもしてないので、夜明けまでは(実時間で)1時間以上あることが予想される。 することが無いので1階と屋上を行ったり来たりぶらぶらする。 いろいろな国の言葉の楽しそうなおしゃべりが聞こえてくるけど日本人は見当たらなかった。 こんな寒空の中に客を駆出すのはチャイ屋と結託したツアー主催者の陰謀に違いないと思いつつも、やはりチャイをすする。 カレーの国インドでは暑い時でも寒い時でも一杯のチャイが体と心を落ち着かせてくれる。チャイがあったからインドの旅も頑張れたのだ。 相変わらず外は真っ暗だったけど、屋上の方が活気があって楽しそうだったのでこっちの方にいることにした いろいろな国の会話に混じってコーヒー売りの「コッフィコッフィー・コッフィコッフィー」という声が聞こえる。 屋上には明かりが無いので、コーヒー売りは常に声を出して自分の存在をアピールしなくてはならない。なんせ広い屋上なのだ。 そうこうするうちにようやく空が白み始めてきた。 外はまだ暗いけど「もうすぐ夜明けだ!」という楽しい気持ちが一同の胸の内に膨らみ始めてきていることがおしゃべりのトーンからうかがい知れる。 ある瞬間、いままで「コッフィコッフィー」をずーっと繰り返していたコーヒー売りが急に「アイスクリーム・アイスクリーム」と連呼した。 一拍おいて、屋上がどっと笑いの渦に包まれた。 そしてその笑いが一旦ひいたところでまた何ごともなかったように「コッフィコッフィー」を繰り返すと再び笑いが沸き起こり、コーヒー売りの元に長い行列が出来た。 物売りに対してまじめで堅物、恥ずかしがり屋、どこか哀愁が漂うといった勝手なイメージを持っていたのだが、まさかコーヒー売りからこんなリスクの大きい爆弾ジョークが飛び出すとは! ぼくも思わず笑ってしまい、列に加わった。コーヒーを飲まない訳にはいかないじゃないか! ぶーるぶるツアーでの心温まるひとときだった。 やがて空が群青色から紫色へと変わってゆき、ヒマラヤ山脈の稜線がぼんやり浮かび上がってくる。 砂漠でも山でも夜明けの景色は色が瞬間瞬間変化していく様が美しい。ビバ大自然! まわりの人々が山脈の方を指さして「あの山が何々でこの山が何々だ。」なんて話しているので、近くの欧米人ツーリストに「どれがエベレストだい?」と訪ねると「この山とあの山のあいだに小さく山頂だけみえるだろう。あれがそうだ。」と言う。 彼が指差すこの山とあの山の方向にはいくつもの山頂が密集しているのだが、多分この山とあの山だろうと目ぼしをつけた山の間にうっすらと影が見えるような気がする。 あれがそうなのか。あ、でも雲のような気もする。脳みそが都合良く山を作り上げているのか自分の目が見ているのか分からない。 そもそも彼が指差すこの山とあの山はぼくの思っているあの山とこの山なのだろうか? 2重の不確定さを前にして、「エベレストを見ましたよ。」と胸を張ってはいえないのである。 ところで、この夜明けツアーは通年催されていると思うのだが、あのコーヒー売りは毎日あのジョークを繰り返しているのだろうか? もっとすごいネタを隠し持っているのだろうか? 客の様子を見て「今日は控えておこう」とかあるのだろうか? 非常に気になるところである。
by amadylan
| 2006-06-24 04:28
| 旅(回想録)
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