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アルマティからキルギス行きのバスに乗り込む。 余裕を持って出発予定時刻の2時間前にバス停に来てみたら、一日一便だけのそのバスがまさに発車しようとしていた。 なんとなく客が集まったなと思うとノリで発車しちゃうのだ。 危ないところだった。 首都ビシュケクに到着したらオビールって役所でレギストラーツィアっていう外国人登録をしなくちゃならない。 中央アジアはやたらとお役所関係の手続きがあるのでめんどくさい。 ビシュケクは首都といえどもアルマティのような高いビルはあまりない。 未舗装の路上をオンボロタクシーがうなり声をあげ土煙をまき散らす。 ここが首都だったら田舎はいったいどんなことになっておるのだ。 街を歩いているおじさんやおじいちゃんは、この国特有の縦長帽子をかぶり街を闊歩する。 火星の一共和国ほどに遠いと思われたこの国は、アジア特有のゆったりとした時間が流れていてちょっと心を落ち着けることができた、顔も日本人に似ているし。 ウズベキスタンに入国するまでに何日か猶予があったので、ビシュケクの東に位置するイシク・クル湖という巨大な湖を越えてアルティン・アラシャンという森林地帯に行く事にした。 ここは旧ソ連高官の保養地で大自然がすばらしいことにくわえて、なんと温泉があるのだ。 温泉。長期旅行者にとってなんて甘美な響きであろうか。 シャワーでは洗い落とすことのできなかったゴビ砂漠の砂埃、目のくらむ様な旧ソビエト圏のお役所手続きによる疲れを洗い流すのだ。 森林地帯の手前の街カラコルはビシュケクと同じくらいに大きな街の様に思えた。 高いビルもありバザールもあるのだがどことなくひっそり閑としていて最果ての街ならではのさみしさを感じてしまう。 中国やインドの喧噪を恋しく思う。 そのさみしさを倍増させるのが食事事情である。 中央アジアの食事はとにかく羊である。 羊うどん、羊水餃子、羊スープ、羊ピラフ。羊の串焼き。 さほどバラエティに富んでいるとは思われない屋台やレストランのメニューのほぼすべてに羊が入っているではないか。 羊肉が苦手という訳ではなかったのだが選択肢のない状況での羊攻めはけっこうこたえた。 ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジアと国境を越えども越えども羊攻めは続き、自分の汗や体臭や排泄物も羊臭が香り立つようになってきた。 自分の体を構成しているタンパク質がどんどん羊由来のものに置き換わってくのを感じた。 てな訳で中央アジア・カフカスの旅路は星空を見上げてカレーライスやカツ丼に思いを馳せていたのである。 地元のツアー会社の装甲車みたいなキャタピラ車に乗って悪路を3時間ほど進み林を抜けると視界が開けアラシャン渓谷の牧草地帯に到着。 針葉樹林のむこうには険しい岩肌の山脈がそびえ立っている。 見渡す限りの大自然に息をのむ。 今回外国人ツアー客として参加したのはぼくを含めて6人で、スタッフというか人夫みたいな人達が同数くらいいた。 彼らはこの地に所有している宿泊施設の管理、食料その他の物資の運搬に携わっていると思われたが、全く働いている様子は見られなかった。 他のツアー客は馬に乗って遠出したりガイドに連れられてトレッキングに行ったりしているあいだ、ぼくは草原に転がってぼやーんと幸せな気分だったのだが、彼らはぼくが時間をもてあましていると思いゲームを一緒にしようと声をかけてくれた。 1人が手頃な長さの2本の枝を拾って来ると短い方の枝で穴を掘り出した。短い枝の長さは穴の直径より少し長いので、穴をまたぐ様に枝を置く。それをゴルフボールを打つみたいに長い方の枝で引っ掛けて遠くに飛ばしてその場所によって得点を競うのである。 2対2にわかれてゲームをしたが、守備が地面に着く前に小枝をキャッチしたら攻めの得点にならないとか、ちょっと野球に似ている。 3人のスタッフがビシバシ小枝を飛ばし続ける中、ぼくはほとんどぼーっと突っ立ているだけで攻守交代のきっかけもわからずじまいだった。 僕には敵も味方も同じ様に小枝を飛ばしている様に見えても味方は25点で敵は0点だったりした。 キルギスの国技にヤギの首を切り落として内蔵を取り出し代わりに砂を詰めた死体を馬に乗った男達が奪い合うというオトロシイ競技があるということを知っていたのでだろうか、羊臭をにおい立たせ小枝飛ばしに興じる彼らをみて「素朴で気のいい野蛮人」という言葉が頭に浮かんだ。 日が傾いて来るとすごく冷えて来た。真夏といえど標高があるのだろう。 彼らとの親善試合後に念願の温泉に向かった。 川沿いの小屋の中にそれはあるのだが誰も入っていないので貸し切り状態だ。 以前インド北部で入った温泉は人の垢で真っ白だったことを思うと、当たり前のことなのに透明な湯がうれしい。 だれもいないので「うひょー!」なんて大声をあげて入水、気持ちよすぎる。 湯につかり、日本出発からの道のりを回想して随分遠くまで来たなあという、まあまあの達成感を感じつつもこれから向かう国のどちらか言うと嬉しくない噂や越えなければならない国境の数を考えて少しげんなりして、でも考えてもしょうがないので思考停止。温泉の快楽に身を任せるのだ。 羊脂を洗い流しさっぱりとしたその夜は、ツアーカンパニーのプレハブでスタッフと客が一緒になって夕食をとった。 パンと紅茶とクッキーとポテトサラダみたいな夕食。 そのときヨーロッパのツアー客が豚の脂の塩漬けを少し分けてくれた。 パンに塗って食べたらこれが美味い。美味い美味い。 以前も使った表現だが首筋とか肩がぷるぷる震えるそんな美味さ。 その土地の美味い料理を探すだすのが上手な旅行者っているんだよなー。 満天の星を眺めて、体内の羊係数もわずかに下がったステキな夜でした。
by amadylan
| 2009-02-20 23:33
| 旅(回想録)
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