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母親が日本の歌謡曲はダサくて俗悪だという固定観念にとらわれていたので、少年時代に歌謡番組を見ることはほとんどなかった。
そんな音楽的に白紙の状態で最初にぼくの胸に響き渡ったのは小学生の高学年で参加したキャンプでキャンプのお兄さんがギターで歌うフォークソングだった。 以後、中学になるとラジオから流れて来る当時ニューミュージックと呼ばれていた楽曲を録音して聴き入るようになった。 相変わらずテレビ由来の情報はシャットアウトされていたので、歌っている人物の顔をはじめとする諸々の情報はまったくわからない、、、ならまだしもパーソナリティーの曲の紹介を聞き漏らしたためミュージシャンの名前がわからない、途中から録音したので最初の歌詞がわからない、そんな曲も多々あった。 そして困ったことにそんな曲に限ってグッとくるチューンだったりするわけなのだ。 誰が歌っているのか知りたい&歌の歌詞の続きが知りたいという欲望は日に日に膨らむわけで、その曲が再びラジオから流れて来るのを忍耐強く待ち続けたり、レコード店の夥しい数のレコジャケの活字を隅から隅までチェックしたりと涙ぐましい努力をしていたことが思い出される。 後者の努力についての説明だが、当時LP版はビニールでパッケージされていたがEP盤はレコードを入れるビニールの一辺が開いていたのでジャケ紙を取り出し裏側の歌詞を見る事ができたのである。 高校生になると、友人や先輩から何とも魅力的な音楽情報がどしどし入って来る。でもそのことは音源がどしどし入って来るということではない。と言うのは当時のレコードやテープの貸し借りってのは今程イージーではないよなあと思うからだ。 何たってLPレコードは大きいので学校に持って来るのはちょっと面倒くさいし神経を使う。 それとレコードってのは針を落とした分、物理的に少しずつ摩耗されていくもので、誰かの耳で聴かれた分その命を削っているのだ。カセットテープもまた然り。 だからレコードの貸し借りはマブダチよりはちょっと低いくらいまでの友人同士の間で行われてはいなかったか? そんな事もあって高校時代に聴いていた音楽はそれにまつわる友人の顔がすぐさま思い浮かぶことが多いのだ。嗚呼、青春。 大学になると少しずつCDが普及され始める。 経済的な問題により買えるCDの数は当然のごとく限られるので下宿の近くのCDレンタルを利用したり、中古レコード屋まわりなんてことを始めた。 どちらも比較的安い金額で音源を入手できるという強みがあった。 そして多くの音楽好きがそうする様にめくるめくジャケ買いの世界へと足を踏み入れていったのだった。 実際、中古レコード屋ではマシーンになって何千枚ものレコードをめくりましたよ。 このジャケ買い時代にレゲエをはじめとするワールドミュージックとの出会いがあった。 高校時代パンクバンドを組んでた先輩にかっこいいバンドを教えてもらおうとしたところ、先輩はすでにパンクを卒業されていてレゲエという音楽を聴いていた。 彼曰く、「最初は不安に包まれるが、その不安がだんだん心地よくなるのだ。」なんて形容をしていたのがとても気がかりだったので自分もレゲエを聴いてみようと思い、名前ぐらいは知っていたボブ・マーレイの「チャンセズ・アー」とサード・ワールドの「センス・オブ・パーパス」を購入したのがジャケ買いの始まりだった。 ボブ・マーレイ(ボブといえば勿論ディランなのでフルネームで呼ぶ)のアルバムは彼の死後リリースされた未発表曲集で、これぞボブ・マーレイという名盤とは大きくかけ離れたものであると分かったのはしばらく後だったが、そのアルバムは確かに先輩の言う通り漠然とした大きな不安感に包まれていて、「この音楽はどうなのかな?」なんて思ったりもしたが、いくつかのアルバムを聴いてみたら先輩のおっしゃる通りだんだん心地よさが立ち現れて来た。 レゲエを本格的に聴く様になるとボブ・マーレイは避けては通れぬ偉大なミュージシャンであることが解ってくるのだが、彼との出会いが追悼盤だったという自分史がなんだかいけてないなあと思ってしまう。 その後も色々なジャンルの音楽を果敢に聴きまくり、ライブにも行きまくり、田舎に越したら爆音でエレキを弾きまくりと音楽を愛し続けた。 今までは聴いてきた曲には一緒にくっついている風景や顔やエピソードがあったのだけれど、新しい音源にはそれがないなあ。 勿論かっちょいい曲はたくさんある。 でも偶然の出会いであるとかキラキラ光る宝石を発見したという感じがしない。 ひとつに自分の中の新しい音楽を求める気持ちが飽和状態に達したってこともあるかもしれない。 でも、何もしなくても情報の方から自分に飛び込んで来るというこの高度情報化社会が主たる原因だと思うのだ。 例えばamazonでCDを買うと「こんな音楽もありますよ。」なんてメールが来る。 「余計なお世話だよ。」と思いつつもその商品リストに目を通してみると憎いことに結構そそるラインナップだったりする。 このような、そこそこよりちょっと上の感じラインナップに包囲されている状態ってのは選択肢がたくさんあるようでいて逆に、偶然とかひらめきとか野生の感とかその時の気分といった自由の国のコトバを遠ざけていると思うのだ。 これからも音楽の旅をしたいのにな。
by amadylan
| 2008-10-21 01:09
| 雑記
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